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同人誌評:『あみめでぃあ Vol.6』&『うみべの出来事』(下)

12/30/2017

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(※あまりにも長くなってしまったので、記事を上下に分けて公開することにしました。サークル「本質的にちくらぎ」さんの『あみめでぃあ Vol.6』に関するレビューは(上)を御覧ください。)
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(上)に戻る
一方で、つれづれ推進委員会さんもまた「創造と概念の新しい関係」をモットーに掲げておられます。もともとはバンドとして活動しておられたという三人組で、今回は作品を購入すると、小説(文庫本)と楽曲(オンライン配信)の両方を楽しむことができます。

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ということで、今は楽曲版『うみべの出来事』を聴きながらこの文章を書いているのですが、「楽曲を文学フリマで頒布する」=「文学としての音楽」というのはなかなか興味深いコンセプトだと思いました。というのも、言語芸術としての文学は積極的にせよ消極的にせよ概念を扱わずにはいられないわけですが、メロディーやハーモニーやリズムからなる音楽経験には「概念」のように明晰に言語化された思考が介在する余地があまりないように思われるからです(あまり、と書いたのは絶対音感のことが念頭にあったからです。すべての可聴振動を十二平均律として聴く、というのは概念的把握に該当するような気もしますが、当事者でないこともあってよくわかりません)。

とはいっても、もはやベートーヴェンの生涯をフリードリヒ・フォン・シラーの詩から切り離して論じることはできないでしょうし、文人音楽家というにはあまりにも文学者でありすぎたリヒャルト・ワーグナーらのロマン派歌劇や、ジョン・ケージのような実験的試みまで、文学(ないし哲学)と音楽はつねによき伴走者であり続けてきました。またポピュラー・ミュージックにおける歌詞の重要性は言うまでもありません。

ではいったい、音楽にのせて歌詞が歌われることを、われわれはどのように理解するべきなのでしょう?それは感官による概念的思考の侵蝕なのか、あるいは概念による世界の調教なのか、それとも理性と情念の実存における再統合なのか?そもそも言語の起源とはなんなのか、概念をもちいた抽象的議論と心情のこもった歌唱の違いとは……?僕にもまだ上手く答えられませんが、まただからこそ、単なる”文学性”から一歩踏み込んで「概念」に焦点を定めたつれづれ委員会さんの試みはとても興味深いものに思われてきます。
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小説版『うみべの出来事』についても見てみましょう。本作には「存在について」というサブタイトルが付せられています。高校生活を舞台に、他者のまなざしによって安心と不安のあいだを揺れ動く自己のありかた=「存在」を、光と影とに仮託しながら描いてゆく――まさに青春小説の佳作といっていいでしょう。物語が進むにしたがって欠けていたピースが嵌ってゆく(「謎解き」に近い)構成になっているので、ここではあまり内容については書きませんが、あえて主体をぼかした語りの効果だったり、場面転換のそつの無さであったりと、技術的な良さも多い作品だと思いました。
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著者の吉岡大地さんは『あとがき』で、物語を書き進めるにつれて作中人物たちの新しい一面が見えてきた、という趣旨のことを書いておられます。多くの小説家が吉岡さんと同じように、執筆中に「登場人物が生きて、勝手に行動しはじめる」という境地のことを記していますが、概念の集合(=設定)でしかなかった人物が、活き活きとした生として、いわば「存在感」を持ちはじめるという現象もまた、ひとつの面白いテーマだなと思います。
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年歩む

さて、いよいよ2017年も終わりを迎えようとしています。
色々と考えながら書いているため時間がかかっていますが、今後も折をみてレビューは続けてゆきたいと思います。
もちろん創作も。

すっかり堪能したので、今年はここまで。
それではごきげんよう。皆様よいお年をお迎えください。
石田幸丸(習作派編集部)
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