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雑感:石黒正数『外天楼』と、宮村和生氏によるその装丁

11/10/2017

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秋深き隣は何をする人ぞ 芭蕉

​
僕(石田)が​先日たまたまブ○クオフに立ち寄ったとき、思わず「ジャケ買い」をしてしまった本があります。
石黒正数さんの『外天楼』(講談社KCDX、2011年)というマンガです。

よそおいの詩

画像
装丁は宮村和生(5GAS)さんという方だそうです。
シンプルなデザインですが、それがコミックスの並びのなかではかえって眼を引くんですね。
写真ではややわかりにくいのですが、表紙カバーには特殊紙が採用されており、シリコンコーティングされたようなマットな手触りです。一方で人物イラストの部分などは透明インクの厚盛になっていて、触感の違いが手に楽しい。
画像
余白を広くとった詩的で内省的なデザインを、紙の工業製品的な質感がうまく中和しています。そこにデフォルメの効いた現代的なタッチのイラストと、タイトルロゴが乗ってくる――都会的でポップだけれど、どこかちょっと切ない、そんな物語性ある装丁になっていると思います。

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表紙をめくった「扉」の部分には半透明でつや消しの紙が用いられ、背景のイラストが透けるようになっています。トレーシングペーパー的なアレです。
よくある手法といえばその通りなんですが、このトレーシングペーパー的なアレが作家性をうまく演出しているように思いました。作品の完結性を物質的な面からも際立たせているといいますか。こういう工夫は電子書籍には難しい部分かもしれませんね。

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​

意味という救済

そして肝心の作品内容なのですが、こちらもたいへん面白かったです。

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なんというか、うまく既存のジャンルの網をくぐり抜けているような印象がありました。
一見して内容を想像しにくいタイトルであり装丁なのですが、それはおそらく計算されたことなのでしょう。「これはいったいなんの話だろう」と思いながら読みましたし、それが楽しかった。


もちろん個別にはSFなりミステリなりの要素を指摘できるのですが、しかし全体としてはやっぱりジャンルに還元できない一種独特な空気感が残ります。そこには物語の展開がわりあいにゆっくりだということも関係しているかもしれない。つまり「日常」のテンポで「非日常(物語)」を描くことで、ジャンル性を帯びさせる物語要素(「殺人」や「ロボット」のような)をそれとして際立たせずに扱うことができる、ということです。
そうしたこともあり、読み終わってみるとエンターテインメント的な爽快感というより、登場人物の体温のようなものが残っている。
このあたりはぜひ読んでみてください。僕個人としては第3話「罪悪」が好きかなあ。


違和感を違和感として描かず、当たり前のものとして貫徹させる表現のことを俗に「シュールだ」と形容することがあるように思います(対義語は「ベタ」でしょうか)。この作品の登場人物たちも、日常生活の地平で些細な違和感を積み上げてゆくという点で、なんとも「シュール」なコミカルさを有しています。
しかし、それだけでは終わらない。違和感を違和感として指摘する視点(=「ツッコミ」?)こそ存在しませんが、この作品は違和感を決して不条理へと投げ出しては終わりません。これ以上言うとネタバレになってしまうので控えますが、このあたりもぜひ読んでみてください。


一点だけ残念だったのは、作中で田舎から都会へ出てきた青年が露骨な方言を使うくだりで、これはいらないだろうと思いましたが、全体としてはやはり、とても面白い作品だったと思います。次作は書店で買わないと。

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ちなみに、僕は最後まで読んでから気づきたいへん驚いたのですが、この作品、講談社の文芸誌「メフィスト」で2008年から2011年まで連載されていたものらしいです。
そう言われてみると「なるほど」というか、何気ないようでいてエッジの立った表現であることにも納得のゆくものがありますね。
そうこうしているうちに、11月も半ばを迎えようとしています。
23日(木祝)には1年ぶり2回目となる「文学フリマ東京」への参加も控えており、いよいよ修羅場というところ。ちなみに習作派のブースはB-27です。ぜひお立ち寄りください。

そろそろ編集作業に戻らなければいけませんので、今夜はここまで。
それではごきげんよう。

石田幸丸(習作派編集部)
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