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跋にかえて

『三十歳成人説』より「跋にかえて」の一部を公開します。
Afterword
二〇二二年四月一日から、民法改正により成年年齢が十八歳に引き下げられます。明治時代に民法で「成年年齢は二十歳」と定められて以降、実に一四〇年ぶりの改定だそうです。親の同意なく一人で契約手続きができるようになったり、特定の国家資格の受験資格が付与されたり、女性の婚姻可能年齢は現在の十六歳から引き上げられたりするようです。


一方で飲酒や喫煙、賭け事に関しては現状通り二十歳になるまで可能とはなりません。諸々の理由や事情があるのでしょうが、十八歳と二十歳のダブルスタンダードの状況は今後も続いていくようですね。


さて、このニュースを私たちが目にしたのは二〇二〇年三月、習作派編集会議の最中でした。月末までに上げなければならない原稿を抱え、それと別に五月に東京で行われる文学フリマの構想をが決まらず頭をねじ切れるほど捻っていた時、石田がこんなことを言い出します。
「成人してから十年も経つのか」

そう、何を隠そう僕たちは今年で三十歳。アラサーどころかど真ん中です。

「もう十年前のことなんか覚えてないけどな」

僕がそういうと、

「でもなんで成人って二十歳なんだろう」

確かに。特に疑問も持たずに受け入れていましたが、理由を深く考えたことはありません。

「身体面とか精神面とかから考えて大人ってことじゃないの?」

会議がまとまらず疲れていた僕がぱっと思いついたことを言いますが、石田の返答はありません。黙ってパソコンと睨めっこを始めていました。


こうなるとうまい落とし所が見つかるまで進みません。マジで余計なことしてる場合じゃなかったんですが、気になることは確かです。僕ものろのろと携帯を手に取りました。
まず各辞書で調べてみると「成人(成年)」の意味合いは「おとな」という単語で説明されているものばかりでした。同じく「おとな」を引いてみると「成人」に帰ってくるというセルフ鼬ごっこが楽しめましたが、なぜ二十歳かという定義づけはありませんでした。


次に「成人」の歴史を見てみると、江戸時代までは各地域で定義がはっきりせず、明治九年の太政官布告で初めて二十歳と定められたようです。そして明治二九(一八九六)年制定の民法で「成人は二十歳」と規定されます。それ以降は前述の通りこんにちまでその認識が引き継がれています。
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ちなみに「成人式」というものを規定する法律は存在しないようです。あれは各地域が慣習的に行っているだけみたいですね。日本で一番初めの成人式は一九四六年に埼玉県蕨市で開催されました。敗戦ムード打開のための町おこしの一環だったようです。意外にも歴史が浅い。
ここまで調べ、結局何もわかっていないことに気づき、いつの間にか「わからないなら決めてしまおう」という方向に転びかけた時、再度石田が呟きます。

「じゃあそもそも二十歳じゃなくてもいいのでは?」

また突飛なことを言い出しました。

「騒いで職質されてる新成人が報道されて、コメンテーターが『大人としての自覚を』云々説教垂れるような社会では、二十歳はまだおとなと言うに幼すぎるんじゃないかな?」

「じゃあ、何歳ならいいわけ?」

少し考えて、石田は答えました。

「例えば……三十とか?」
というわけで、
我々はここに提唱します。
​

《三十歳成人説》

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